下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは足の血管がふくれてこぶのようになる病気です。下肢静脈瘤は良性の病気ですから急に悪化したり命に関わる事はありません。しかし自然に治る事はないので、血管がボコボコして見た目を損なったり、足のだるさ・むくみなどの症状が日常的に起こり、生活の質(QOL)を低下させます。国内には1,000万人以上の患者さんが存在するとされています。超音波で痛みもなく簡単に診断できますので、ぜひお気軽にご相談ください。
下肢静脈瘤の症状
主な症状は「足の血管がボコボコと浮き出ている」や「むくみ」、「足がつる(こむら返り)」などがあります。血管がぼこぼこと浮き出ているのが有名ですが、血管が浮き出ていなくても静脈瘤が存在する(かくれ静脈瘤)ことはよくあります。
初期の段階では「むくみ」や「だるさ」といった症状しか無いため、放置しておく方もいます。進行してコブのように血管が膨らんでくると、人前で足を出すことがためらわれるようになります。
また、睡眠中の「こむら返り」や「かゆみ」などが慢性化して、日々つらい思いをされている方もいらっしゃいます。さらに放置した場合、硬くなったり(脂肪皮膚硬化症)、くるぶしが黒ずんできたり(色素沈着)する上に、もっと重症になると皮膚に穴があき出血(潰瘍)することもあります。
- ステージ1
夜間につる、足のむくみやだるさ・痛みを感じる(特に夕方) - ステージ2
細い血管が浮いて見える - ステージ3
足の血管がコブのようにぼこぼこしている - ステージ4
ふくらはぎや足首の皮膚に黒ずみがある(うっ滞性皮膚炎) - ステージ5
うっ滞性皮膚炎により皮膚潰瘍が起こる
うっ滞性皮膚炎による皮膚の黒ずみ(1枚目)うっ滞性皮膚炎による皮膚潰瘍(2枚目)
下肢静脈瘤の原因
正常な静脈は血液を心臓に戻る役割をしています。この際重力によって足に血液が戻らないように、静脈の内側には『弁』が存在します。この弁は「ハの字」をしており、通常は逆流しようとすると閉じる、という構造をしており、この働きから「逆流防止弁」とも呼ばれています。血液が逆流してしまうと静脈が拡張し、「血管がボコボコ」と浮き出たり、老廃物のたまった血液が足にたまりますので、「足のむくみ」や「こむら返り」の原因となります。栄養不足が慢性化すると皮膚の新陳代謝が低下し、皮膚の黒ずみや潰瘍を引き起こします。
下肢静脈瘤になりやすい人
遺伝
片方の親が下肢静脈瘤だと50%、両親ともの場合には90%の確率で子供は下肢静脈瘤を発症するというデータがあります。遺伝的な要素が大きく関係する疾患です。
立ち仕事
立っている時には重力によって血液が下から上へ流れようとするので、弁には常に負担がかかっていることになります。弁への負担が長時間に及ぶと、徐々に働きが悪くなり、ついには壊れてしまいます。1日10時間以上立っている方は重症化しやすいので注意が必要です。代表的な職業には教師、美容師、調理師、販売員などが挙げられます。
年齢
あるデータでは、下肢静脈瘤全体のうち70%以上が60歳以上であったというデータも存在し、高齢者の方に多い病気と言えます。これは年齢を重ねるに従って、全身を構成している軟部組織(肌や筋肉などの軟らかい部分)の強度が弱くなってくるためで、静脈弁も軟部組織の一つですので年齢とともに老化し、逆流を防止する力が弱まってきます。
出産を経験された女性
妊娠時には、女性ホルモンの影響により静脈弁が軟らかくなることに加えて、胎児により中心の静脈が圧迫されるために、弁が壊れやすいとされています。出産経験のある女性の2人に1人は発症するとうデータも報告されており、女性に多い病気と言えます。
(文責:医師・医学博士 藤原圭史)