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むくみについて

むくみとは

「むくみ・浮腫」は、ほっておいても命がとられる訳ではないので、我々医師の中でもわかっていない事が多い分野です。しかし近年、人生100年時代と言われますように寿命が伸び、また癌の治療も進歩しすぐに亡くならないケースが増えたことから、むくみを訴える方が増えています。

人間の体は、心臓から血液が全身の細胞へ動脈という道を使って酸素や栄養分を届けるために送り出され、届けると同時に細胞から排出された二酸化炭素や老廃物を回収して、静脈やリンパ管という道を使って心臓に血液を戻します。動脈の血流量を100とすると、静脈95・リンパ管5くらいに分配され、還流されると考えられています。

 

基本的に、むくみの原因はこの図のどこかに悪いところが生じます。

例えば心臓などのポンプが悪くなると血液を吸い上げられなくなりむくみが生じますし、下肢静脈瘤やリンパ浮腫があれば血液が逆流・停滞して心臓に血液が戻りにくくなりむくみます。また血液中のタンパク質が少なくなると浸透圧の低下により(簡単にいうと血液がシャバシャバになります)、血管の外に血液が漏れ出てむくみが生じてしますし、加齢により筋肉量が減ると、筋ポンプ作用(後述)が悪くなりむくみます。

 

むくみの原因

病的・慢性的なもの

心不全

心臓に何らかの障害があるために、心臓がポンプの役割を正常に果たせなくなり、血行が悪くなってむくみを引き起こすことがあります。

肝不全・腎不全

血中にはアルブミンというたんぱく質があり、血管に水分を取り込んだり排出したりしながら浸透圧を調整する役割を担っています。アルブミンは肝臓で作られるため、肝臓の機能が落ちる(肝不全)とこのアルブミン量が低下し、むくみの原因となります。また腎臓の機能が落ちる(腎不全)と体から水分が十分に排泄されないため、体内に余分に水分がたまり、むくみの原因となります。

リンパ浮腫

全身に張り巡らされたリンパ管がなんらかの原因で障害され、流れが滞ってしまっている状態です。基本的にはがんの術後に起こることが多いです。大腸がん、子宮がん、乳がんなどの手術では、リンパ節を切除したり、放射線治療をして癌の転移を防ぐ必要がありますが、その際リンパ管を損傷するため、リンパ液の流れが悪くなってむくみを生じます。時期としては、がんの手術後すぐに発症する人もいれば、5年後、10年後に症状が突然現れることもあります。しかしがんの治療後ではなくともリンパ浮腫が起こることもあり、原因が特定できないリンパ浮腫は特発性リンパ浮腫と言われています。残念ながらリンパ浮腫は自然に治ることがなく非常に難治性の病気です。急に悪化して急性リンパ管炎をおこすと熱を持ったり痛みを感じたりします。早めにむくみの専門医を受診することをおすすめします。

下肢静脈瘤

足の静脈には一度心臓に向かった血液が逆流して足に戻ることを防ぐ逆流防止弁(静脈弁)がついています。その静脈弁が壊れて、逆流した血液が足に溜まってしまい、むくみの原因となります。下肢静脈瘤は超音波検査ですぐに診断ができます。詳しくは当院の下肢静脈瘤のページをご覧ください。


深部静脈血栓症

長時間のバスや飛行機に乗ったり、術後や病気で寝たきり状態など、同じ姿勢を取り続けた後に足の静脈に血栓ができることがあります。足の静脈に血栓ができると静脈が心臓に戻りにくくなり、足はむくみます。治療は血栓を溶かすような薬剤を使用します。また足に血栓ができるのを予防するには、水分摂取や足を動かすように努めるほか、弾性ストッキングを履くことも有効です。

甲状腺機能低下

皮膚を指でおさえてへこませても、元に戻るようなむくみが特徴です。(専門的にnon pitting edemaといいます)全身にあらわれますが、特に起床時にむくみ、昼頃になると少し改善する傾向があります。首にある甲状腺という臓器の機能低下によります。採血検査で診断することが出来ます。

加齢

年を重ねるとどうしてもむくみが生じてきます。多くの場合は座りっぱなしの時間が長いことによる筋力低下や、循環機能・排泄機能の低下、血液成分中のタンパク質(アルブミン)の低下などが挙げられます。特にふくらはぎは「第2の心臓」とも呼ばれており、筋肉が収縮することで静脈が圧迫され、血液がしぼり出されるように流れ出します(筋ポンプ作用)。そのため、加齢によるむくみの治療で重要な事はどんどん歩く、運動する事です。運動する事で下腿の筋力低下が改善され、むくみ症状は改善していくことが多いです。

Education and Research at Mayo clinicから転載

 

一過性のもの

長時間同じ姿勢でいる

立ち仕事やデスクワークなど、ずっと同じ姿勢の状態でいると、ふくらはぎの動きが少なくなり、ふくらはびの筋ポンプ機能がうまく働かなくなってしまいます。その結果、足の血液が心臓に戻りにくくなり、うっ滞してむくみに繋がります。その際は1時間に一回ほど姿勢を変えたり、ご自身で簡単なマッサージをするなどをすることをオススメします。

運動不足による筋力の低下

運動不足によってふくらはぎの筋肉が衰えると、筋ポンプ機能が低下し、足の血液を心臓へ送り戻す効率が悪くなります。

ビタミン・ミネラル・タンパク質の不足

特にカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルや、ビタミンB1、たんぱく質が不足すると、むくみが出やすくなります。

アルコールの取りすぎ

アルコールは血管内脱水の作用があるため、飲みすぎると体の水分が失われ、血液濃度が高くなります。体は危険を回避するために血管内に水分を取り込み、血液濃度を低くしようとします。この時に取り込んだ水分の一部がむくみとなります。

女性特有のむくみ

女性は男性よりも筋肉量が少ないため、ふくらはぎの筋ポンプ作用が弱く足がむくみやすい傾向にあります。また、妊娠や生理など、ホルモンの影響でむくみが出やすいと言えるでしょう。また妊娠によるむくみ生理によるむくみもあります。原因の多くははホルモンで、黄体ホルモンというホルモンの分泌量が生理前になると多くなります。すると余分な水分が体に溜まりやすくなりむくみます。

むくみ対策

病的な原因以外でむくみを解消し予防するには、むくみやすい生活を改善することが必要です。
予防することで、もしむくんでしまっても、その程度を和らげることができます。

マッサージ・ストレッチ

ふくらはぎに溜まった余分な水分や血液を心臓に戻すようにマッサージをします。やり方も、”揉む” のではなく、”なでる” ようにしてリンパ液の流れを改善します。また、ふくらはぎにある腓腹筋やヒラメ筋をストレッチでほぐすことで、血流の流れを良くし、血行を促進します。

 

塩分摂取は適度に。ビタミンEを摂取しましょう。

むくみの主成分であるナトリウムをためないためにも、食生活に塩分の過剰摂取を避ける事が予防の大前提です。塩分の多い食事は水分の摂取にもつながるので、特に間食でのスナック類やカップラーメンなどは控えましょう。また、塩分の排出を促進するカリウムを積極的に摂取し、血流をよくする働きがあるビタミンEも適度に摂取すると良いでしょう。

◎カリウムを多く含む食品

アボカド・バナナ・はっさく・いよかん・もも・干し柿・りんご・キウイ・ひじき・昆布・ほうれん草・じゃがいも・にんにく・納豆など

◎ビタミンEを多く含む食品

アーモンド・ピーナッツ・アボカド・抹茶・かぼちゃ・ほうれん草・モロヘイヤ・赤ピーマン・バジル・卵・たらこ・いわし・しそ・ごまなど

運動

ウォーキングや階段の上り下り、スクワットなどで、筋肉を鍛え、ポンプ機能を働かせてあげましょう。また、足首をグルグル回してほぐしたり、眠る時に足の下に薄い座布団などを入れて、足を少し高くして眠るのも効果的です。

十分な休息をとる

睡眠時など、横になると足に溜まった余分な水分が移動します。そして横になることで循環する血液量が増えます。すると腎臓への血液量も増え、余分な水分を尿として排出してくるのでむくみが軽減します。

医療用弾性ストッキングの使用

医療用弾性ストッキングは最も簡単にできる 保存的治療法です。医療用弾性ストッキングは筋ポンプ機能をサポートする効果や、静脈の血管径を収縮させて血管本来働きを改善させる結構促進効果もあります。当院ではリムフィックス社の医療用弾性ストッキングを採用しています。

(文責:医師・医学博士 藤原圭史)

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