母指CM関節症
母指CM関節症とは
母指CM関節症は親指の付け根にある関節の軟骨のすり減りによって生じる疾患です。50歳前後の方に最も頻繁に発症する変形性関節症の一種とされています。親指の付け根の関節をCarpometacarpal関節(CM関節)とも呼ぶことから、母指CM関節症と呼んでいます。
親指のCM関節は可動域が広く、「握る」「つまむ」などの動作により大きな負担がかかり、このCM関節が変形性関節症を起こしたものが母指CM関節症です。
母指CM関節症の症状
主な症状は母指の付け根の痛みです。何かを握る、つまむ、親指で力を加えるなどの際に痛みが生じます。具体的には
① 物をつまむ時、瓶のふたを開ける時など親指に力を入れる動作で痛みを感じる。
② 親指が開きにくく、親指の付け根あたりが膨らんでいる。
③ 進行してくると、親指の指先の関節が曲がり、付け根側の関節が反った「白鳥の首変形(スワンネック変形)」や亜脱臼(あるべき場所から部分的にずれ、外れかかっている状態)になってくる。
などの症状があります。
母指CM関節症の原因
母指CM関節症の原因には様々なものがあります。
①加齢
加齢により骨の新陳代謝が低下し、軟骨がすり減り骨と骨同士がぶつかり合い、関節へのダメージを与える状態になっています。
②親指に強い負担のかかるスポーツや労働
親指は他の指と向き合うことでさまざまな動作を可能にしています。このためCM関節は大きく動き、そのため使い過ぎにより、CM関節は関節軟骨の摩耗が起きやすくなっていきます。
③更年期の女性(女性ホルモンの減少)
更年期の時期には女性ホルモン(エストロゲン)が減少していきます。女性ホルモンは腱や関節を柔軟に保つという作用を持っているため、減少することは関節の炎症を起こしやすくなる原因になります。
母指CM関節症の診断
診察時の所見でCM関節の変形(腫脹や骨隆起)があるか観察します。似た症状を起こす腱鞘炎やリウマチによる関節炎と区別するためにX線検査を行い、CM関節の隙間や骨棘の有無、亜脱臼などを確認します。また場合によっては超音波検査でも炎症の有無の確認を行う事があります。
母指CM関節症の治療
まずは安静、消炎鎮痛薬や湿布などの貼付薬にて経過観察します。その上で簡単な装具(サポーター)を使用する事もあります。母指CM関節を休ませること、動作時の正しいポジションを保つこと、痛みを軽減させることなどの作用があります。
動注治療(自費診療)
CM関節症などの変形性疾患では、慢性炎症に伴う病的新生血管(モヤモヤ血管)ができている事が多いです(1)。動注治療はこの異常血管だけをフタ(塞栓)し、炎症を改善し痛みを緩和する方法です。基本的には1回での治療となりますが、経過によっては2回程度治療する場合もあります。
(1)J Vasc Interv Radiol. United States; 2021;32:1341–7.
ステロイド注射(保険診療)
超音波ガイドに関節裂隙に直接ステロイドを注入します。効果が出る人は早期に痛みが改善します。ただし、ステロイド注射は年間で投与できる目安の量がありますので、繰り返し投与する事はできません。
手術
保存的治療で痛みが緩和しない、亜脱臼を伴う高度な関節の変形・親指の白鳥の首変形が起こっている時は、手術が検討されます。CM関節を固定してしまう関節固定術の他、大菱形骨の一部を切除して靱帯を再建する切除関節形成術などがあります。
治療は症状などと合わせて適切な治療を選択していきます。
これらの治療は大府市の宮田整形外科・皮フ科でも院長自らが行なっています。お近くの方はそちらの受診でも対応しておりますので、ご検討ください。
宮田整形外科・皮フ科のHP
(文責:医師・医学博士 藤原圭史)