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肩腱板損傷

痛み止めと理学療法をしているけど、よくならない。
肩の痛みで寝れないのでなんとかしてほしい。

運動器超音波の出現で肩腱板損傷の診療が大きく変わり、進歩しました。
適切な治療を提案させて頂きますので、是非一度ご相談ください。

 

肩の腱板とは

腱板とは、肩関節を取り巻く四つの回旋筋腱板のことで棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の腱から構成されています。関節の回旋運動(大まかには棘上筋が外転運動,棘下筋と小円筋が外旋運動,肩甲下筋が内旋運動)に重要な役割を果たしているとされています。60歳以上では30%に腱板損傷があると言われており、比較的ありふれた病気と言う事ができます。

 

肩腱板損傷の症状・原因

腱板損傷において最も損傷しやすいのは棘上筋腱の損傷です。そのため肩関節挙上時の痛みや夜間痛などが出やすいです。症状が五十肩(肩関節周囲炎)と似ていますが、五十肩のように拘縮(肩関節が硬くなり可動域が下がること)が起きないのが特徴です。

ここで重要なのは腱板損傷で痛みを感じるのは、腱板損傷がある方の20-30%程度とされています。これは腱板損傷自体の痛みというよりは、腱板損傷により損傷部に炎症が起きてしまい痛みが出ているからと考えられています。

原因としては外傷やスポーツ・仕事での酷使などが多いとされていますが、特に原因のない変性断裂の場合もあります。

 

肩腱板損傷の診断

身体所見や、超音波検査、MRI検査で行います。特に超音波検査が有用で①Peribursal fatのラインが陥凹 ②大結節部の骨皮質不整 ③腱板内部の低エコー像などが特徴とされています。大結節部の骨皮質不整があると75%が腱板損傷があるという報告がありますので、超音波で皮質不整があるかをチェックするのは重要です。(1)

 

 

(1) AJR 1998; 171:229  

 

肩腱板損傷の治療

まずは消炎鎮痛薬や湿布などの貼付薬にて経過観察します。その上で簡単な装具(サポーター)を使用する事もあります。

超音波下ガイド下ステロイド注射、ヒアルロン酸注射

超音波ガイドに関節・滑液包や烏口上腕靭帯、関節腔内に直接薬液を注入します。当院ではステロイドを用いる事が多いですが、症状や経過で薬を変えています。ただし、ステロイド注射の場合は繰り返し投与すると腱や靱帯を萎縮・断裂させる可能性があるので、頻回の投与はできません。肩へのステロイド注射を受けた人は、受けてない人に比べ腱板断裂リスクを7.44倍という研究もあり(2)、ステロイド自体が腱板損傷のリスクとなり得ます。

(2) Lin, Ching-Yueh, et al. "A positive correlation between steroid injections and cuff tendon tears: a cohort study using a clinical database." International Journal of Environmental Research and Public Health 19.8 (2022): 4520.

 

超音波ガイド下 肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)への注射の実際

 

運動器カテーテル治療

腱板損傷の痛みは先述のように慢性炎症に伴う痛みとされています。慢性炎症の場合、病的新生血管(モヤモヤ血管)が超音波検査などで確認できる事が多く(下図)、運動器カテーテル治療はこの異常血管だけをフタ(塞栓)し、炎症を改善し痛みを緩和する方法です。基本的には1回で完結する治療法となります。

運動器カテーテル治療の詳細はこちら

 

自己組織注入治療(自費診療)

新しい注入治療は、患者様の自己組織を疼痛部位に直接注射する治療法です。自己組織(血小板)には主に「血液を固めるはたらき」と「組織の修復を促す成長因子を出すはたらき」があり、後者の能力を使って、自分自身がもともと持っている修復力を引き出すことができる治療法です。しかし損傷した腱板を修復・再生する能力はなく、あくまで炎症を改善することで痛みを改善させるとされています。腱板部分断裂と腱板炎に対しては短期的にはステロイドより効果的という報告もあります。(3)

自己組織注入治療についてはこちら

(3) Bhan, Kavyansh, and Bijayendra Singh. "Efficacy of platelet-rich plasma injection in the management of rotator cuff tendinopathy: a review of the current literature." Cureus 14.6 (2022)

 

手術

上記のいずれの治療でも痛みが改善しない場合に検討します。

治療は症状などと合わせて適切な治療を選択していきます。いずれの治療でも理学療法は必須となる事が多いです。

 

(文責:医師・医学博士 藤原圭史)

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