うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍
うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍について
うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍は下肢静脈瘤の最も重い症状で、多くは長年静脈瘤を放置したことによって足の皮膚に色素沈着を起こし、場合によって穴があいた状態です。見た目が痛々しいだけではなく、常に痛み、出血や感染を起こすこともあり日常生活に支障が出ます。皮膚の病気だと思って皮膚科を受診し、消毒や軟膏で治療を続けてこられた方も多くおられます。しかしうっ滞性潰瘍の原因は下肢静脈瘤なので、静脈瘤そのものを治療しない限り、外用薬を塗っても潰瘍は治りません。下肢静脈瘤のついての詳細はこちらをご覧ください。
うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍の原因
こちらの文献(1)のデータからうっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍の原因の85%は下肢静脈瘤によるものです。その他に機能性静脈不全(弁構造破綻のない静脈不全)、PTS: post-thrombotic syndrome(静脈血栓後症候群)などが挙げられます。また原因が一つではないことも多く、図2のようにあらゆる原因が複合的に組み合わさっている場合も考えられます。
図1:うっ滞性皮膚炎・潰瘍の原因
(1)白石恭史, et al. "静脈性潰瘍 (Venous Ulcer)—本邦における静脈疾患に関する Survey XIX—." 静脈学 29.1 (2018): 1-12
図2
下腿潰瘍について
虚血性(動脈)かうっ滞性(静脈)を鑑別することが重要です。
虚血性潰瘍の特徴:
部位:足指など足の先端に潰瘍ができることが多い
見た目:潰瘍は深く、辺縁は不整で、浸出液が少ないのが特徴
うっ滞性潰瘍の特徴:
部位:足関節〜下腿にできることが多い
見た目:潰瘍は浅く、辺縁整で、浸出液が多く色素沈着を伴う
うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍の治療
うっ滞性皮膚炎・下腿潰瘍の治療で重要なのは、第一に圧迫療法です。その上で原因は下肢静脈瘤であれば、下肢静脈瘤の治療も平行して行います。(下肢静脈瘤の治療の詳細はこちら)医学会で最も権威のある雑誌である
New England Journal of Medicine(NEJM)でも静脈性潰瘍に対する早期血管内焼却術の有効性は証明されており、なるべく早く治療することで無潰瘍期間を延長させたとの報告があります。(2)
また下腿潰瘍に消毒や軟膏は必要なく、朝晩シャワーで洗浄してください。1にも2にも圧迫療法が重要で、そうすることで毎日病院に消毒に通う必要もなく、長年悩まされた潰瘍が治ってしまいます。下腿潰瘍で悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。
(2)Gohel, Manjit S., et al. "A randomized trial of early endovenous ablation in venous ulceration." New England Journal of Medicine 378.22 (2018): 2105-2114.