下肢静脈瘤の治療
根治的治療
①血管内焼却術(ラジオ波治療)
血管内焼却術とは、直径2mmの細い管(カテーテル)を病気になった静脈の中に入れて、血管の内側から熱でふさぐ治療法です。治療後半年ぐらいで血管は吸収されてなくなってしまいますが、治療した静脈は、足にとっては不必要な血管ですので塞いでしまっても悪い影響はありません。血管内焼却術にはラジオ波とレーザーが存在しますが、当院ではラジオ波を採用しています。治療成績や合併症の頻度は同等とされています。治療時間はだいたい片足で20-30分程度で、局所麻酔のみ・日帰り治療で行うことができます。
②血管内塞栓術(グルー治療)
血管内塞栓術は、2019年12月に保険適用になった新しい治療法で、医療用接着材(グルー)を、カテーテルで治療する血管内に注入して血管を閉塞する治療法です。血管内焼灼術では熱による痛みや合併症に対する対策として必須であったTLA麻酔が不要となるため針を刺す回数が減り、術後の弾性ストッキングの必要性も低減されます。但し、グルーを血管内に注入しますので、アレルギーなどをお持ちの方は治療を受けられない場合があります。
グルー治療とラジオ波治療の治療効果:治療効果に差はありません。
*①②いずれの場合でも、スタブ・アバルジョン(stab avulsion)法という、非常に小さい傷(1-3mm)で特殊な器具を使って静脈瘤を切除する方法を組み合わせる事があります。(下写真)傷が小さいため縫う必要がなく、ほとんど傷跡が残りません。血管内治療を行ったあと、数か月様子を見ても静脈瘤が小さくならない場合や、血管内治療時にあらかじめ同時に行うこともあります。こちらの瘤切除を行った場合は弾性ストッキングの着用が必要となります。
③ストリッピング術、高位結紮術
古典的な下肢静脈瘤の治療法で、弁が壊れて逆流をきたした病的な静脈を文字通り抜去(ストリッピング)して取り除きます。入院が必要な場合も多く、複雑な形で再発する場合もあり、現在は国際的にも体に負担の少ない血管内治療(①②の治療)がさかんに行われています。
症状を改善する治療
硬化療法
硬化剤というお薬を注入して、外から圧迫することで静脈を閉塞させる治療法です。極めて細い針で注入しますので、痛みは通常の注射と比較して少ないです。
適応疾患
- 小さな静脈瘤(くもの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤)
- 側枝型静脈瘤
- 軽度の伏在型静脈瘤
- 陰部静脈瘤
- 再発静脈瘤
- 出血性静脈瘤
デメリットとして硬化剤により硬化剤により血液が流れなくなった静脈瘤がしこりになることがあります。ただし、3~6か月程度で吸収されてなくなっていきます。また色素沈着という皮膚のシミができる事があります。色素沈着は1年半~2年ほどで大部分は薄くなりますが、若干色素沈着が残ることもあります。
くもの巣静脈瘤に対する硬化療法
圧迫療法(医療用弾性ストッキングによる治療)
弾性ストッキングという医療用の着圧の強い靴下を履くことで、足から心臓へ血液の返りをサポートする方法です。軽症の方やお仕事などの都合ですぐに根本治療が難しい方におすすめしています。医療用の弾性ストッキングは特殊な編み方により、足を下から段階的に圧迫し、むくみや余分な血液のたまりを予防することができます。医療用のものと市販のものでは、圧迫圧や圧のかかり方が事なるため、医師の指導のもと選ぶ事が重要です。当院では日本静脈学会認定弾性ストッキングコンダクター資格を有する医師による相談を受ける事が可能です。是非一度ご相談ください。
当院では治療はShared Decision Making(SDM:共有意思決定)という考えのもと決定しています。SDMとは医療者 と患者が最適と思われる選択肢を相談しながら決める方法で、昔行われていたインフォームドコンセントの ように、医療情報を一方的に押しつけて同意を得るようなもの とは似て非なるものです。症状や画像所見などと合わせて適切な治療を選択していきます。
(文責:医師・医学博士 藤原圭史)