帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹という体幹部によくできる皮疹の後に痛みが持続する事があります。
非常に難治性の痛みで、簡単にとることはできません。
当院では痛みによりそい、一緒に解決策を見つけていきたいと思っています。
また予防も非常に重要で50歳以上の方はワクチンがあります。
是非一度ご検討ください。
帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹が治癒した後もピリピリとした続く痛みのことで、帯状疱疹の合併症としては最も頻度が高く、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症していると言われています1)。
痛みの程度は人により異なり、ピリピリとした軽度の痛みから、触れるだけで痛みを感じる(アロデニア)症状まで多岐に渡ります。
1)Thyregod, H.G. et al.:Pain 128(1-2):148, 2007
帯状疱疹後神経痛の原因
まず帯状疱疹の原因から説明しますが、帯状疱疹は、子どものときにかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが、水ぼうそうが治癒した後も、脊髄近くの神経節と呼ばれる部分に潜み、疲れやストレスなどで身体の免疫力が低下したときに再び活性化することで、神経を通って皮膚に水疱ができます。日本人では5~6人に1人がかかるといわれています。
帯状疱疹後神経痛は、その帯状疱疹の初期治療が遅れた場合などに、皮膚や神経がダメージを受け炎症が起き、生じ得ます。炎症が起きた神経は、正常の活動ができなくなり、異常な興奮伝達が生じてしまうことで、強い痛みが生じるのが帯状疱疹後神経痛の病態と考えられています。
一度なってしまうと非常に難治性が高く、帯状疱疹後神経痛のうち3分の1の人は3か月以上続くとされ、5分の1の人は1年以上続くと報告されています。当院では岡崎市のワクチン費用助成金対象医療機関であり、ご希望の方はシングリックス(不活化ワクチン)を割引された価格で打つ事できます。是非ご検討ください。
帯状疱疹後神経痛のリスク因子
①帯状疱疹発症初期に抗ウイルス薬の投薬を受けていない。
②帯状疱疹後神経痛発症(移行)初期に適切な治療を受けていない。
③高齢(50歳以上)
④免疫不全をもたらす基礎疾患(糖尿病、癌、ステロイドや免疫抑制剤内服中など)
⑤顔面や体幹部に皮疹
帯状疱疹後神経痛の治療
帯状疱疹後神経痛には、万人に当てはまる絶対的な治療法というものはありません。基本的には、ベースに薬物療法を行いながら神経ブロックや運動器カテーテル治療を加えていくイメージになります。
短期間で帯状疱疹後神経痛を完全に取り除くのは非常に難しく、また治療は長期にわたります。このため、いかに痛みをコントロールしてうまく付き合っていくか、という観点で治療に取り組むことが大切です。
薬物療法
NSAIDS(ロキソニン、セレコックスなど)
神経障害性疼痛(リリカ、タリージェなど)
抗うつ薬(トリプタノールなど)
抗てんかん薬(テグレトール、ガバペンなど)
オピオイド(トラムセット、トラマールなど)
神経ブロック注射
局所麻酔薬やステロイド注射で痛みの伝達をブロックする治療法で、神経ブロックの中には星状神経節ブロックや硬膜外ブロックなどがあります。治療効果は人により異なりますが、数回試して一時的な効果しかない場合は、反復治療はあまり望ましくないです。
運動器カテーテル治療
痛みに対する新しい選択肢として注目されている治療法で、神経にできた炎症を抑える事で痛みを改善させる方法です。帯状疱疹後神経痛は非常に難治性のためカテーテル治療でも効果が高いとはいえず、改善する可能性は全体の40-60%%ほどですが、一度効果が出た方は長期に効果が持続する場合が多いです。ご希望の方は是非一度ご相談ください。
生活スタイルの見直しやサポートグループの活用
適切な休息を確保し、ストレスを管理することが重要です。ストレスは痛みを悪化させることがあります。また栄養バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を行います。これらは免疫システムを強化するのに役立ちます。また帯状疱疹後神経痛を経験する患者さん向けのサポートグループも存在しており、他の患者と情報を共有し、感情的なサポートを受けることができます。