膝蓋腱炎・ジャンパー膝
膝蓋腱炎・ジャンパー膝とは
膝蓋腱炎は、膝蓋腱という膝のお皿の骨(膝蓋骨:しつがいこつ)の下にある腱に炎症が起こり痛みを呈する病気です。一般的にはジャンパー膝と呼ばれ、バレーボールやバスケットボールのようなジャンプを繰り返すようなスポーツで多いとされ、なかなか痛みがとれなかったり、再発を繰り返す人も少なくありません。プロスポーツ選手の引退の原因になる事も多く、早期発見が重要な病気です。
膝蓋腱炎・ジャンパー膝のリスクファクター
下記のような原因でなる事が多いです
①使いすぎ(オーバーユース)
②アスリートなど一般の方よりも高い負荷をかけている方
③10歳代の成長期(骨の成長が体の成長に追いついていない)の方
④久しぶりに運動習慣を持ちはじめた方
膝蓋腱炎・ジャンパー膝の診断
まずは膝のお皿の下の部分に圧痛があるかを確認します。また痛みが「階段を降りる時」や「椅子から立ち上がる時」に生じる場合、膝蓋腱炎を疑う症状です。画像検査は超音波検査(エコー)が有用で、腱肥厚や腱実質・腱周囲に血流シグナル(もやもや血管)の増加がないか確認します。臨床的に膝蓋腱炎が疑われるが、超音波検査にて所見がはっきりしない場合、MRIによる精査を行う場合もあります。
膝蓋腱炎・ジャンパー膝の超音波像
膝蓋腱炎・ジャンパー膝の治療
急性期であれば、まずできるだけ使わないよう安静にし、消炎鎮痛薬や湿布などで患部の炎症を抑えていきます。また大腿四頭筋のストレッチや遠心性トレーニングは非常に重要で、再発予防にも役立ちます。しかしそれらの治療では改善しない事も多く、その場合は下記の治療法を選択していきます。
運動器カテーテル治療(自費診療)
膝蓋腱炎・ジャンパー膝などの腱炎付着部炎では、腱実質に慢性炎症に伴う病的新生血管(モヤモヤ血管)ができている事が多いです。運動器カテーテル治療はこの異常血管だけにフタ(塞栓)し、炎症を改善し痛みを緩和する方法です。基本的には1回での治療となります。
体外衝撃波(自費診療)
患部を照射し病変部で痛みを感知する自由神経終末の変性を誘導して無痛覚とするところにあります。提携院の大府市の宮田整形外科・皮フ科で実施する事ができます。
切らない再生医療(自費診療)
切らない再生医療注射は、患者様の自己組織を疼痛部位に直接注射する治療法です。自己組織(血小板)には主に「血液を固めるはたらき」と「組織の修復を促す成長因子を出すはたらき」があり、後者の能力を使って、自分自身がもともと持っている修復力を引き出すことができる治療法です。
手術
安静や上記の保存的治療で改善しない場合検討されますが、手術が必要となるケースは少ないとされます。手術は炎症が長期化して変性し肥厚した腱を部分的に切除したり、腱断裂部の修復術が検討されます。特に過去の報告では、腱肥厚の厚さが11.5mm以上の場合、保存的治療抵抗性になる可能性が高く手術が必要となる場合があるとされています。(1)
治療は症状などと合わせて適切な治療を選択していきます。
(文責:医師・医学博士 藤原圭史)
(1) Golman M et al. Rethinking Patellar Tendinopathy and Partial Patellar Tendon Tears: A Novel Classification System. Am J Sports Med. United States; 2020;48:359–69.